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第22回テント施工雑学講座

皆さんこんにちは!

合同会社小橋川テント、更新担当の中西です。

 

さて今回は

~ニーズの多様化~

 

テントは、仮設の屋根から**外皮(エンベロープ)へ。アウトドア、イベント、物流、防災、医療、観光、建築膜構造まで用途が拡張し、発注者の期待は性能・体験・運用・環境・証跡(エビデンス)**の五角形で語られるようになりました。本稿では、どこでニーズが分岐し、何を商品設計に落とし込むべきかを整理します。


1|多様化を加速させた5つのドライバー

  1. 極端気象:猛暑・豪雨・強風が常態化 → 耐風・遮熱・排水・通気の“パッケージ化”が必須。

  2. 用途拡張:防災/医療ブース、グランピング、屋外商空間、膜建築までレンジが拡大。

  3. 運用スピード:短期イベント・ポップアップの増加 → 施工時間・人員の最小化。

  4. 規制・安全:防炎・難燃、風雪荷重、避難動線、電気・衛生の要件が高度化。

  5. サステナ:PVC依存からの多素材化、修理前提設計、回収・リサイクルスキームの要望。


2|セグメント別「ニーズの翻訳」早見表

アウトドア(UL/ファミリー/グランピング)

  • 性能:軽量・嵐耐性(耐風・耐水圧)・結露制御・遮熱/断熱。

  • 体験:居住性(高さ/採光/静音)・設営時間・デザイン性。

  • 素材傾向:ポリエステル×PU/シリコーン、薄手はシリコン系、ハイエンドはUHMWPE複合。

  • 運用:修理キット同梱、ポール互換、撥水の再加工性。

レンタル・イベント

  • 性能:耐風・耐荷重、連棟時の雨仕舞い、暗転・遮光。

  • 運用設営/撤収KPI、人員・車両最適化、清掃・乾燥・保管動線。

  • 証跡:防炎ラベル、設営記録、撤収風速の運用基準(閾値)を明文化。

物流・仮設ヤード(倉庫型)

  • 性能:耐風・耐雪・遮熱、結露/滴下対策、車両動線の明確化。

  • 構造:アルミ/スチールフレーム+膜、バラスト設計、ドックシェルター連結。

  • 運用:長期設置の点検計画、膜交換の容易性。

防災・医療

  • 性能:気密・陰圧化/陽圧化、換気量、導線分離、洗浄性。

  • 素材:抗菌/耐薬品、透明窓の視認性。

  • 運用:未経験者でも設営できるUI、色分け、ミス防止コネクタ。

屋外商空間・観光(マーケット/ルーフテラス/グランピング常設)

  • 性能:遮熱・通風・雨仕舞い、耐汚染(油/煙)、夜間照明との相性。

  • 意匠:膜形状の美観、ブランディング一体化。

  • 証跡:騒音・照度・風対策の運用マニュアル。

膜構造建築(スタジアム・回廊・上屋)

  • 性能:長期耐候、透過光、構造解析に基づく張力・アンカー。

  • 素材:PTFEコートガラス、ETFEフィルム等。

  • 法規:構造安全、避難、電気・防火・保守の計画。


3|設計レバー(どこで差がつくか)

  1. 膜材:PU/PVC/シリコーン/TPU/ガラス繊維/PTFE/ETFE。

    • 指標:耐水圧、引裂強度、耐候、難燃、加水分解、耐汚染、リサイクル性。

  2. 骨組み:アルミ・スチール・カーボン・エアビーム。

    • 指標:施工性、剛性/重量、腐食、修理性。

  3. 接合:縫製+シームテープ/高周波溶着/熱風溶着/接着。

    • 指標:耐水・耐久・補修手段。

  4. アンカー:ペグ/ケミカル/バラスト/車両係留。

    • 指標:設置地盤/荷重設計/撤収基準。

  5. 熱・水・空気:遮熱ライナー、二重幕、通気ギャップ、樋・水切り、除湿・換気量。

  6. 音・光:吸音ライナー、眩しさ制御、透過率、暗転性。

  7. 電気・安全:配線ルート、照明吊り、避難動線、消火・感知器の取り合い。

  8. 運用DX:3Dコンフィグ、QR台帳(防炎・試験値・使用履歴)、風速アラート。


4|“ニーズ多様化”に応える商品パッケージ例

  • 耐風・安全運用パック
    風洞/数値根拠+アンカリング表(地盤/バラスト/ペグ)+撤収風速の閾値+教育用動画。

  • 快適性パック(遮熱・通気・結露対策)
    二重幕+遮熱ライナー+棟換気/基部通気+ドレン設計。夏季ピーク低減の概算を添付。

  • 衛生・医療パック
    気密・陰圧対応、抗菌素材、清掃容易ディテール、消耗品リスト。

  • リペア&回収パック
    補修パッチ・溶着/縫製SOP・パーツ供給年限・回収便の仕組み。

  • データ台帳パック
    防炎ラベル、材料ロット、試験値、設営/撤収記録、点検履歴をQRで一元管理


5|KPI(評価指標)を明確にする

  • OTIF:時間内・数量内・設営完了率

  • 設営/撤収時間(人時):基準値と現場実績

  • 事故/ヒヤリハット:件数・要因・再発防止

  • 損傷率:膜/骨組み/付属の不良比率

  • 快適性:内部温度・湿度・騒音・照度の実測

  • 環境:回収率・修理率・素材別CO₂原単位(推計)


6|短いケーススタディ

A|海風の強い海浜イベント

  • 課題:突風でのバラスト不足。

  • 施策:風上側バラスト増+テンション再配分+撤収風速の現場閾値導入。

  • 結果:損傷ゼロ、設営リードタイム−15%。

B|夏季の屋外物販テント

  • 課題:内部温度が高い、結露で商品が濡れる。

  • 施策:二重幕+遮熱ライナー+天頂排気+樋

  • 結果:日中ピーク−5〜7℃(対外気差の改善)、結露クレーム解消。

C|医療用トリアージブース

  • 課題:未経験者で設営に時間。

  • 施策:色分けハーネス、逆差し防止コネクタ、動画SOP、陰圧装置のクイック接続

  • 結果:設営時間半減、誤接続ゼロ。


7|調達・見積で“揉めない”RFP項目(抜粋)

  • 風/雪荷重の設計値とアンカリング表

  • 防炎・難燃等級、試験値(耐水圧・引裂・耐光)

  • 設営/撤収の基準人員・時間、撤収風速閾値

  • 清掃・乾燥・保管手順、推奨点検周期

  • 修理部材と供給年限、回収・廃棄スキーム

  • データ台帳(QR)の項目と提供形式


8|90日アクション(すぐ効く三手)

  1. **A3一枚の「設営・撤収標準」**を整備
     アンカー本数/バラスト重量/撤収風速/人員配置を図解し、全現場で共通運用。

  2. 素材ポートフォリオの再定義
     用途別にPU/PVC/シリコン/TPU/ETFE/PTFEの推奨表を作り、試験値とともに営業資料化。

  3. QR台帳の導入
     防炎ラベル・ロット・試験値・使用履歴・点検写真を紐づけ、引渡し=証跡の体制へ。


結び:多様化は“複雑化”ではなく“設計機会”

ニーズの多様化は、単に品番が増えたという話ではありません。性能(風・水・熱・音)×運用(時間・人員)×体験(快適・意匠)×環境(修理・回収)×証跡(試験・記録)を一体で設計できる企業が選ばれる時代です。
次の提案では、耐風・快適・運用・証跡の4点セットを“最初から”提示してみてください。テントはもはや布ではなく、使い方まで含めたシステムです。多様化は、その価値を最大化するチャンスです。

 

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